なぜこの集落は「密集」しているのか
宿根木に足を踏み入れると、まずその密度に驚きます。板張りの家々が肩を寄せ合い、人ひとりがようやく通れるような路地が入り組んでいます。
この形には理由があります。宿根木は狭い谷あいの限られた土地に築かれた集落で、使える土地を最大限に活かすため、建物を隙間なく建てる必要がありました。強い海風から家を守るという意味でも、密集した造りは理にかなっていたのです。
北前船が運んだ富
江戸から明治にかけて、日本海には北前船と呼ばれる商船が行き交いました。大坂と蝦夷地を結び、寄港地で商品を売り買いしながら進むこの航路は、寄港地に大きな富をもたらしました。
宿根木は船主や船大工が暮らす集落として栄えました。集落の家々に使われている技術は、船をつくる技術の応用です。板を隙間なく組み上げる壁は、まさに船大工の仕事。「家が船のようにつくられている」と言われるゆえんです。
歩き方のポイント
宿根木の魅力は、細部にあります。急ぎ足で通り抜けるのではなく、路地に入り込み、壁板の重なりや石畳、家の間から覗く海に目を向けてみてください。
とくに有名なのが、三角形の敷地にぴたりと収まるように建てられた「三角家」です。土地の形に合わせて建物のほうを変形させるという発想に、この集落の暮らしの知恵が凝縮されています。
- 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている集落
- 路地は狭く、住民の生活の場でもある
- 公開されている家屋は見学できる場合がある(時期により異なる)
集落は現在も人が暮らす生活の場です。私有地に立ち入らない、大きな声を出さない、無断で住居を撮影しないなど、住民の暮らしへの配慮をお願いします。
小木エリアとあわせて
宿根木のある小木エリアには、たらい舟の体験や、海運で栄えた時代の資料を集めた博物館もあります。
「なぜこんな場所に、これほど密度の濃い集落があるのか」——その答えは、海と船にあります。集落と海をセットで見ることで、佐渡南部の歴史が立体的に立ち上がってきます。